ただ・・・




反則だ・・・お前の笑みは――





とある、日曜日。

柳家は誰もいなかった。

柳は一人、家で留守番をしていた。

今日は珍しく、用事もなく。

お昼の用意をしようとした矢先。

ピンポーン

インターホンが鳴った。

ドアを開けると、そこには真田がいた。

「弦一郎」

柳は何も言わずに、真田を家に上げた。

「すまなかったな、突然来たりして・・・」

「いや、今日は誰もいないんだ。暇を持て余していた」

真田はリビングの椅子に勧められるまま、そこに座る。

「あ、そうだ。お昼はどうした?」

「いや、まだだが・・・」

その言葉に柳が笑みをこぼす。

「ちょうど、お昼を作ろうとしたんだが、食べるか?」

「あぁ、すまない。蓮二」

真田はそういってから、台所へ向かう。

しかし、柳に追い返された。

お客だから・・・といって・・・。

仕方なく、真田は椅子に再び、腰をかけた。

気がつくと、彼の瞳は柳を追いかけていた。

そんな自分がおかしくて、不意に笑みをこぼす真田だった。


「待たせたな」

そこに出されたのは二人分の煮込みうどん。

「薄味かもしれんが・・・」

柳はそういうと、真田が食べるを待つ。

真田が美味しそうに音を立てる。

「うむ、美味い。細麺と薄いだしがいい感じに仕上がっている」

柳はホッと安心した。

二人はしばらく、食事を楽しんだ。

「そういえば、何か用でもあったのか、弦一郎」

片づけを終え、柳がふと、声をかけた。

「・・・いや・・・」

真田は珍しく、口を濁している。

「ん?どうかしたのか」

柳が真田の顔を覗き込んだ。

目の前に柳の顔がアップに映る。

――言えるわけがない――

少しづつ、真田は自分の体温が上昇するのを感じた。

柳は不思議そうに真田を見つめている。

「弦一郎、本当にどうしたんだ?」

「・・・・お前に・・・」

真田はたどたどしく、言葉を出す。

顔は横を向いていた。

「俺がどうかしたのか?」

柳は軽く笑みを浮かべ、真田の言葉を待っていた。

――反則だ・・・――

真田は心の中でつぶやく。

「お前に・・・会いたかったんだ・・・・」

真田はもはや、柳の顔をまともに見ることが出来なかった。

柳はその言葉を聞くと、真田の正面に移動する。

真田の瞳に満々な笑みを浮かべた柳が入った。

「弦一郎・・・俺もだ」

柳はそういうと、軽く、唇を重ねた。

――お前の笑顔は・・・反則だ――

用もなく、ただ、それだけで行動した自分に

真田は微かに笑みを浮かべると、柳に口付けを返した。




――ただ・・・会いたかっただけ・・・――






おわる